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『東京の地下鉄相互直通ガイド』のご案内

発売からだいぶ日が空いてしまいましたが、弊社新刊『東京の地下鉄相互直通ガイド』(9月28日発売)をご紹介。

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所澤秀樹・来住憲司著『東京の地下鉄相互直通ガイド』(A5判・184頁、税込2,160円)

東京の相互直通運転(相互乗り入れ)は複雑怪奇です。首都圏にお住まいの方にはどうということはないのでしょうが、年に数回程度しか東京に出張しない私(大阪勤務)は、地下鉄に乗るたびに異様な光景に驚かされます。

弊社の東京支店がある都営新宿線の神保町の場合、都交車(10-300形)と京王車(1000系、5000系)が往来するだけですから、御堂筋線で大阪メトロ車(10系・10A系、20系、30000系)と北急車(8000形、9000形)による相互乗り入れのことを思えば、そう大して驚かなくて済みます。

けれども、副都心線を使うときは、たじろぎます。メトロ車(7000系、10000系)のほか、東武車(9000系、50000系)、西武車(6000系、40000系)、東急車(5000系)、横浜高速車(Y500系)が行き来するのですから、そりゃあ驚きます。

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写真は浅草線の直通運転路線図の一部

車両を細かく分類するなら、5社14種もの車両が運用されているわけで、メトロ車以外が入線してくると、どの列車がどこまで行くのかわからず、一瞬不安を覚えることがあります(まあ、私の行動範囲だと、だいたいどれに乗っても問題ないのですが)。副都心線おそるべし。

東京の地下鉄における相互直通は、おそらく世界一複雑かつ精緻です。というのも、海外ではこれほど多くの事業者が一地域に集中すること自体がないからですが、それにしても毎日当たり前のように異なる事業者間で相互直通をやってのけるのは、先進的な鉄道システムをもつ他の先進国にとっても驚くべきことでしょう。しかも1本や2本の路線じゃありません。10本もの路線で整然と行われているのです。

ことさらに日本の鉄道を持ち上げるつもりはありませんが、これは世界的に見ても特筆すべき事象であり、そこに日本の鉄道システムの妙があると言ってもいいかもしれません。ただ、あまりに複雑なのでその全貌が見えにくくなっているのもたしかです。

というわけで、本書では、車両の運用や運行番号のしくみから、知られざる事業者間の取り決め、込み入った直通運転の歴史まで、図版・写真入りで詳しく解説しました。図版はすべて所澤氏渾身のオリジナルで、路線ごとに①相互直通運転路線図、②直通列車の運用区間と車両の運用範囲、③乗務員担当範囲を掲載して、相互直通の全貌を明らかにしています。

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浅草線の直通列車の運行区間と車両の運用範囲を整理した図。都交車のほか、京成車、京急車、北総車が運用されています

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直通列車の乗務員担当範囲。これも所澤氏によるオリジナル図版

もちろん、相互直通に運用されている車両の紹介もあります。あまりに種類が多いので各車両の説明は簡潔にしていますが、車両写真とともに、諸元や簡単な略歴、見分け方のポイントなどを記載しました(現在運用されているすべての車両を収録しています、たぶん)。

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有楽町線・副都心線で運用されている車両の一部。各路線で運用されているすべての車両を紹介しています

また、相互直通ならではの写真――異なる事業者の車両が並んだ瞬間を捉えた写真――もできるだけ掲載しました。運用がわかっていても、どちらかの運行がちょっとでも遅れると揃いませんし、急遽運休になることもあるので、並んだ瞬間をとるのは簡単なことではありません。本書で「組み合わせの妙」を味わっていただければ幸いです。

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『近代日本の旅行案内書図録』が紹介されました!

今年5月に刊行した、荒山正彦著『近代日本の旅行案内書図録』が10/1付の日本経済新聞の文化欄で紹介されました。

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著者・荒山正彦先生の研究対象である、近代の旅行案内書の特徴がうまくまとめられた記事です。本そのものの紹介は記事の最後のほうに少し出てくるだけですが、中身は本書の内容紹介そのものです。

別記事でもご紹介したように、本書には鉄道院や鉄道管理局などが鉄道旅行の需要を喚起するために刊行した旅行案内書が多数収録されています。

まずは多種多様の案内書が出版されたことを知らしめたいということで、表紙画像を中心に掲載していますが、明治から昭和戦前期の路線図や図入りの沿線案内ページもけっこう載せています。

いずれも当時の雰囲気が伝わってくる興味深いものですが、とりわけ台湾、朝鮮半島、満洲といった外地の路線図は貴重です。

当時の日本人が旅行に何を期待していたのか、旅行によって国土にどのようなイメージを抱き、何に価値を見出したのか――同時代の海外の旅行書にはない趣向や工夫が凝らされた旅行案内書を眺めるうちに、いろいろなことが考えられはずです。

【参考】
5月25日発売!『近代日本の旅行案内書図録』

9月20日発売!『鉄道手帳[2019年版]』

臨時列車第2号は、『鉄道手帳』のご紹介です。

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昨日、刷りだしが届きました! 2019年版のジャケットおもて面は、DD51

◆11年目にして「全国鉄軌道路線図」を大改訂

いつも『鉄道手帳』をご愛用くださり、ありがとうございます。『鉄道手帳』編集部では2008年の発売以来、みなさまのご要望にお応えするべく種々の改良を加えてきましたが、2019年版では過去最大級の改良に踏み切りました。

『鉄道手帳』の顔ともいえる巻頭路線図の大改訂です。

『鉄道手帳』の巻頭路線図は、通常の路線図と異なり、貨物鉄道や路面電車を含む「全路線・全停車場(停車場)」を掲載、さらに線路のカーブや分岐、路線の重なりなど線形の特徴をなるべく再現することに意を注いできました。

幸い、この方針は刊行以来ご好評をいただいていますが、如何せん文字サイズが小さいのが難点でした。B6サイズという限られたスペースに収録するため、やむを得ない面もあるのですが、多くのユーザーの皆様同様、私も何とかならないものかと思っていました(近頃、老眼気味です)。

また、JR線以外の路線名が記載できていない点も問題として認識していました。これも時々ハガキでご意見をいただきましたが、潜在的には多くの方が改善を求めておられたことと思います。

◆「文字を大きくするだけ」とは言うけれど……

「文字を大きくするくらい、そんなに難しいことかなぁ?」と思われるかもしれません。

でも、これが大変なことなのです。作る側としては、なるべく触りたくない、できれば避けて通りたいくらいの難事なのです。

細かい説明は省きますが、ページレイアウトや路線の位置関係など、路線図を隅から隅まで見直す必要があるのです。編集・製作側としては想像するだけで目眩がしそうな作業です。

そもそもスペースが限られているので、文字サイズを大きくして果たしてうまく収まるかどうかもわかりません。下手をすれば、かえって見づらくなる可能性もあります。

こういうわけで、路線図大改訂の必要性を感じつつも、これまで先送りしてきたのですが、節目の10周年を経て、次の10年に向けて新しい一歩を踏み出すにあたり、長年の懸案を解決することにしました。

◆文字サイズアップ&私鉄ほかの路線名を記載

では、路線図のどこをどう変えたのか。大きな点でいうと2つあります。

1つはお察しのとおり、文字の拡大です。文字のサイズ(級数)を従来比1.3倍にし、書体(フォント)も変えました。体感的には130%以上大きく見えると思います。都心部など駅が集中した箇所の視認性が心配でしたが、レイアウトを変更するなどして解決しました。

もう1つは路線名の追加です。従来路線図では、JR線のみ路線名を記載し、私鉄ほかは会社名しか記載していませんでした。

これもやはり都心部がネックで、路線名を入れる余地がないほど路線が稠密な地域が多数あるため、すべての路線名があったほうがいいと思いつつも、記載を断念してきました。

が、せっかく全面改訂するのですから、この機会に貨物鉄道や路面電車も含め、全路線名を記載することにしました(『鉄道要覧』記載の路線名を標準としつつ、路線愛称や通称もなるべく入れています)。

前置きが長くなりましたが、ここで新旧路線図を見比べてみましょう。

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同じ倍率で比較しています。駅名が見やすくなり、JR線以外にも路線名が付いています

ほかにも、路線や駅の位置関係、路線の分岐や重なりを修正するなど、できるかぎりの改良を行ったつもりです。みなさまには長らくご不便をおかけしてきましたが、これまでの路線図と見比べていただくと、確実に見やすくなっているのがおわかりいただけると思います。ぜひお手にとってお確かめ願います。

9月20日発売!『鉄道快適化物語』

ご無沙汰しております。鉄道手帳編集部です。

毎度のことで恐縮ですが、当ブログは波動輸送よろしく、季節ごとに臨時列車を運行する感覚で記事をアップしているため、僭越ながら「不定期連載」を堂々と謳っております。

が、いわゆる繁忙期に入りましたので、相変わらずの不定期ではありますが、しばらくはこまめに更新しようと思います。お時間のある方(加えて少しくらいの誤字脱字、勘違いはまあまあ許せるという方)は、しばし毒にも薬にもならない話にお付き合いくだされば幸いです。

さて、今月は鉄道本が3点出ます。ひと月に3点も出すのは初めてのことで、おかげでこの8月は盆休みどころか、土日祝日もほぼ返上する羽目になりましたが、いずれも情熱を傾けた甲斐のある一冊です。

1冊目は『鉄道快適化物語――苦痛から快楽へ』という本。今日、印刷会社から刷り出しが届きました。

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小島英俊著 四六判・272ページ 本体1,700円(税別)⇒画像クリックで書籍案内に飛びます

明治5(1872)年の鉄道開業からこのかた、日本の鉄道は飛躍的な進歩を遂げ、その国民性も相俟って独自の道を歩みつづけ、世界に誇るべき存在となりました。

その歩みのハイライトとして外国メディア等でよく取り上げられるのは、世界初の高速鉄道をはじめとする技術発展、緻密なダイヤとその正確な運行、他国には例を見ないほど多くの鉄道会社が共存することからくる多彩な車両群といったところでしょうか。

日本の鉄道の来し方や現在の立ち位置をみる場合、こうした技術や運行システムの発展と多様性はたしかに不可欠な要素ですが、本書はここに「快適性の向上」という視点を加えることを提案します。

ふだんから鉄道を利用しているとあまり意識しないものですが、日本の鉄道はけっこう快適にできていると思うのです。もちろん、大幅な列車遅延や通勤ラッシュなど、もう少しどうにかならないかと思うこともありますが、見方を変えればそのほかのことが気にならないほどに整っているとも言えます。

ところが、今から130年ほど前、東海道線が全通したばかりの頃の列車旅行はまったく様相が異なっていました。本書の「はしがき」から引用してみます。


今の普通車に該当する三等車の座席は板張りで固くて狭いし、ランプ照明は暗くて頼りない。冷暖房などという文明の利器はなく、夏は蒸し暑く、冬は薄ら寒い。トイレは少なくて、しかも垂れ流し式で御世辞にもきれいとは言えず、当然臭う。車外への「黄害」も問題であった。さらには汽車であるから、煤煙にも悩まされる。まさに苦痛の長旅であった。


大変な時代ですよね。著者の小島さんによれば、「旅行を意味する英語のtravelは、フランス語のtravailに語源があるといわれ、travailには「苦痛」という意味もある」そうですが、当時の列車旅行はそれを体現するものであったのです。

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明治時代の3等車

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山陽鉄道の1等寝台車

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オリエント急行の個室

ふたたび「はしがき」からの引用。


こうした時代を経て、列車の快適性は徐々に向上していった。座席のサイズや材質は少しずつ改善されて、少々の長旅にも耐えうるものとなったし、やがて夜行客のための寝台車も出現した。半日以上に及ぶ長時間の乗車ともなれば食事が欲しいところで、食堂車やビュッフェも登場した。これは単に空腹を満たすのみならず、新たな旅の楽しみを提供した。さらに、実際にその恩恵を蒙る人は多くないであろうが、展望車やラウンジカーも現れた。鉄道の快適化のシンボル的存在といえよう。

車内設備の変遷も目を見張るものがある。車内照明は、灯油ランプ、ガス灯を経て、蛍光灯、LED照明となった。暖房は比較的早くにスチーム暖房が導入されたし、それに比べると時間はかかったが、通勤冷房車も当たり前となった。トイレも清潔になり、今や世界の先端を行く。

世界に誇る新幹線は、海外では考えられないほど高頻度で運行し、旺盛な旅客需要に応えつつ、定時運行を実施している。あまりにも速いので、往時嫌われたSLの煤煙が今や懐かしいほどである。


というわけで、長くなってしまいましたが、本書ではこうした「快適性向上」の歩みを、テーマを立てて具体的に辿ります。安全性やスピードの向上はもとより、乗り心地の改善、車内設備の進化、果てはあこがれの豪華列車まで、さまざまな観点から日本の鉄道の進歩を考察しています。

本書発売は9月20日です。よろしくお願い申し上げます。

5月25日発売!『近代日本の旅行案内書図録』

ご無沙汰しております。

今回はいわゆる鉄道本ではありませんが、かなりの程度鉄道に関係のある本なので、ここで紹介させていただきます。

荒山正彦著『近代日本の旅行案内書図録』(5月25日発売)

明治初期から太平洋戦争期までに刊行された〈旅行案内書〉の系譜を初めて体系化した図録で、旅行・観光から近代日本のすがたを浮かび上がらせる、まさに資料性と鑑賞性を兼ね備えた一冊です。

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荒山正彦著『近代日本の旅行案内書図録』(5月25日発売)


●近世の出版文化を継承した〈旅行案内書〉

明治以降、日本では多種多様な旅行案内書が数多く出版されました。近世の道中記や図会の伝統を継承した日本の旅行案内書は、同時代のヨーロッパで刊行されていた旅行案内書に勝るとも劣らない出来映えで、見る者に新鮮な驚きを与えます。

当時ヨーロッパでは、ドイツのベデカー社やイギリスのマレー社が、鉄道案内や名所案内、地図などを収録した旅行案内書を出していました。これらは同時代にあっては充実した内容であったといえますが、文字情報の比率が高く、読み込むにはそれなりに努力が必要でした。

日本の旅行案内書もヨーロッパのそれを範としたはずですが、日本では先の要素に加えて挿絵や鳥瞰図など図表現が積極的に取り入れられ、誰にもわかりやすい、旅情を誘う案内書がたくさん生み出されました。その底流には、江戸時代に江戸・京都・大坂で培われた出版文化があったと言っていいでしょう。

●当時の製作者たちに脱帽

造本もまた工夫が凝らされていて、函入り・布クロス装の上製本、描き下ろしのイラストがあしらわれた表紙、見返しに描かれた美しい風物画、多色刷りの図絵、折込の地図や路線図など、当時の製作者たちの丁寧な仕事ぶりが随所に窺えます。

明治中期以降、鉄道が各地に敷設されるようになると、鉄道管理局や各地の鉄道局が旅客需要喚起のためにこぞって旅行案内書を出したこともあり、まさに百花繚乱の時期を迎えました。

この頃には沿線案内のみならず、たとえば社寺詣でや郷土玩具を主題とする案内書や、旅程と費用概算に特化した案内書など、多様なニーズに応える本も生み出されました。外地や植民地、外国の旅行案内書も出版されました。

本書には、こうした旅行案内書の表紙(裏表紙)、扉、本文、地図、挿絵、広告などの図版600点超が収録されています。眺めるだけでも楽しいのですが、多種多様の旅行案内書を通して、近代日本の旅行の様子、旅行文化の成熟過程に思いを馳せていただければ幸いです。

以下のページに本文を確認できるアルバムがあります。
創元社 Facebook アルバム:『近代日本の旅行案内書図録』刷りだし見本