2015年版の見所(3) 鉄道高速化略史

しばらく『鉄道手帳』から離れていましたが、年の瀬も近づいてきましたので、ふたたび『鉄道手帳[2015年版]』の見所の説明をしたいと思います。今回は資料編に新しく入れた「鉄道高速化略史」について。

2014年は東海道新幹線の開業から50年という記念すべき年ですので、編集部では新幹線関連の資料を作りたいと考えていました。ただ、関連資料を集めてみると、すでにやり尽くされた感がありました。新幹線の形式やスペックを一覧にしたもの、新幹線の統計データなど、何かできないものかと考えましたが、所澤氏いわく「ありきたりだし、いまさら何を、の感がある。ほかで見られるしね」とのこと。

そう言われればそのとおりですが、何かしら作りたいと考え、結局、年表を作ることにしました(所澤氏のOKが出ました)。年表だって、ありきたりでしょ、と言われると、これまたそのとおりです。新幹線をメインに据えた書籍やムックには、必ずと言っていいほど、新幹線の来歴を辿る年表が付いています。では、どこが違うのか。

資料編の「鉄道高速化略史」の冒頭には次のように書きました。

 ここでは、世界初の高速鉄道とされる新幹線を中心に、国鉄・JRの在来線および私鉄、リニアモーターカー等における速度向上のあゆみを辿る。ただし、紙幅の都合もあり、20世紀以降の「鉄道の高速化」(最高速度の向上)において注目すべき事績と思われるものに限って記述する(各種の速度試験も対象とする)。また比較のため、〔 〕を付して諸外国の鉄道の高速化に関する事項も記す。
 なお、表中で「最速」という場合、原則として粘着式鉄道のそれを指し、リニアモーターカーとは区別する。


資料説明のためやや堅苦しく書いてしまいましたが、要するに、新幹線以外の粘着式鉄道(ざっくり言うと、ケーブルカーやラック式鉄道、リニアモーターカー以外の鉄道)も扱いますよ、ついでに日本だけでなく外国の鉄道も扱いますよ、でも全部は扱えないので、主だったものだけ扱いますね、ということです。

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112年のあゆみを全4頁にまとめました。字が小さくてすみません。

蛇足ながら、冒頭の説明では〝「鉄道の高速化」(最高速度の向上)〟としていますが、これは表定速度や平均速度のことは取り上げませんという但し書きです。表定速度は運転区間の距離を走行時間と停車時間の合計で割ったもの、平均速度は停車時間を含まず、走行時間だけで計算したもので、いわゆるスピードアップにはこれらも重要ですが、今回の年表に入れると煩瑣になるので掲載していません。

新幹線だけの年表はすでにたくさんありますし、その高速化に的を絞っても大して面白くないので、在来線や私鉄も入れることにしました。そもそも在来線における高速度試験等の結果があったからこそ、動力分散方式による新幹線の開発が行われたわけですしね。私鉄については、じつはもう少し記述を増やしたかったのですが、記述の整合性やスペースに難があったため、この程度に終わってしまいました。

外国のものまで入れたのは、新幹線のポジションをより明確にするためです。たしかに新幹線は高速鉄道のはしりですが(高速鉄道の定義によりますが)、日本同様、海外においても鉄道の高速化が追求されていました。表を前から読み込んでいくと、高速鉄道の開発は日本の独擅場ではなかったことがよくわかると思います。

また、表をよく見ると、日本の動力分散方式に対し、ヨーロッパではほとんどの場合、動力集中方式が採用されていたこともわかります。どちらがいいかは一概に言えませんが、日本は高速鉄道において最初から独自の道を歩んでいたわけです。

リニア関係も入れました。調べてみると細かい記録がいっぱい出てきて、形式名も紛らわしいものだから、途中で割愛しようかと思いましたが、中央新幹線(リニア中央新幹線)が話題となっているいま、はずすわけにも行かず、ぶつぶつ独りごちながらまとめました。個人的には、リニモ(愛知高速交通東部丘陵線)に使われているHSST(磁気浮上式鉄道の技術のひとつ)の歴史を知ることができたのが収穫でした。

こうした資料がいままでなかったわけではありません。実際、同じような目論見をもった年表はありました。ただ、今回は関連する事項を徹底して掘り起こしてまとめ、正確に記述することにこだわりました。たとえば試験運転では、「高速度試験運転」や「速度向上試験」といった言葉を使い分けています。文献によって表記が異なることがありましたが、信頼のおける資料や試験時の写真を調べ直して、できるだけ当時の呼称を記述しました(海外分は「高速試験」で統一)。

私の不注意ですが、試験運転区間の表記も難儀しました。ある文献では試験運転区間が記されてるのですが、別の文献では最高速度が達成された区間が記されていたり、区間が微妙に異なっていたりしました。最初はこのことに気づかなかったため、結局、あとで全部調べ直すはめに……。いつか鉄道史年表を一冊の本にまとめたいと考えていましたが、この作業を通して、それがいかに無謀であるかを思い知らされました。

いろいろ書きましたが、最終的に所澤氏のチェックを経ているので、内容はたしかだと思います(これがまた的確で、かなり助けられました)。スペースの都合で字が小さくなってしまいましたが、お時間のある時にでも、高速化のあゆみを辿っていただければ幸いです。

追記 年表の末尾に最高速の「日本一」「世界一」をまとめました。営業運転か試験運転か、標準軌か狭軌かなど、条件によって「ナンバーワン」が変わるので、それを一覧にしてみました。年表だけを見ていると何が何やらわからなくなるかもしれませんが、これを見れば一目瞭然です。

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