『鉄道史の仁義なき闘い――鉄道会社ガチンコ勝負列伝』

いよいよ明日、京都鉄道博物館がオープンします。それに合わせて、あわてて弊社の新刊『京都鉄道博物館ガイド』の情報を紹介してきましたが、ここらでひと息つきます。

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今回は長らく紹介しそびれていた新刊、『鉄道史の仁義なき闘い』を取り上げます。

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●書名
鉄道史の仁義なき闘い――鉄道会社ガチンコ勝負列伝

●著者
所澤秀樹(しょざわ ひでき)氏

●内容
名阪間をめぐる官設鉄道と関西鉄道の運賃・サービス競争、阪神間で官設鉄道に正面から挑んだ阪神電気鉄道、その阪神と熾烈な抗争を繰り広げた阪神急行電鉄、「地下鉄の父」早川徳次と東京横浜電鉄の総帥・五島慶太との地下鉄争奪戦などなど、史上有名な数々の対決を取り上げ、日本の鉄道の来し方を振り返る。会社の存亡をかけた闘争はまさに「仁義なき闘い」であり、近代産業史の縮図ともいえ、一読巻を措く能わずの面白さがある。

●目次
第一戦 官設鉄道VS関西鉄道
名阪間の歴史的抗争/明治期の鉄道業界の事情/私設鉄道誕生の動き/私鉄創立ブームのなかで産声をあげた関西鉄道/小刻みに線路を延ばしていく関西鉄道/トドメの大阪延伸は他の私鉄の買収で/そして合戦の火蓋が切られる/弁当まで出してお客を獲得/九 歴史の彼方へと消え去った関西鉄道

第二戦 阪神電気鉄道VS阪神急行電鉄
蒸気鉄道に喧嘩を仕掛けた電車/明治中期に巻き起こった電車ブーム/阪神電気鉄道開業までの道程/阪神電車開業で蒼くなる官鉄勢/速度違反前提の出血大サービス/小林一三、颯爽見参!/徹底した「大衆志向」の小林商法/阪急神戸線開業前の阪神との確執/九 小林一三悲願の阪急神戸線開通/激化する阪神対阪急の抗争/あらゆる方面に及ぶ抗争劇/山の上でも縄張りを競う

第三戦 東京地下鉄道VS東京高速鉄道
〝地下鉄の父〟早川徳次/地下鉄建設計画実現に向けて/「東京地下鉄道株式会社」設立/ようやく叶った地下鉄の開業/東京地下鉄道躍進のとき/五島慶太と東京高速鉄道/東京地下鉄道と東京高速鉄道の対立/紛争の結末/それからの五島慶太


番外戦 駿豆鉄道(西武)VS箱根登山鉄道(小田急)
バスの乗り入れ問題で一悶着/芦ノ湖の駿豆独占を破った箱根観光船/〝ピストル堤〟こと堤康次郎/「乗り入れ運輸協定」破棄/遮断機で実力阻止/不発に終わる運輸省の調停/抗争の終結


●体裁/価格
四六判・216頁/1512円(税込)

先月出た本で、その時すぐにご紹介すべきでしたが、『京都鉄道博物館ガイド』の編集に忙しく、機を逸してしまいました。すみません。

日本の鉄道と諸外国のそれと比較するとき、もっとも大きな違いのひとつとして、鉄道会社の数と競合路線の存在が挙げられます。欧米でも複数の鉄道会社があるのは珍しくありませんが、日本のように、国有鉄道と私鉄がガチンコ勝負を繰り広げたり、競合路線をもつ私鉄同士が長きにわたって共存するというのは、珍しい現象ではないかと思います。

なぜ日本ではこんなにも私鉄が増えたのか、なぜ競合路線が淘汰されず、いまも共存しているのか――その理由は本書で確かめていただくとして、今回は本書の内容を少しだけつまみ食い。


◆西宮神社の戦い
阪神対阪急の抗争では、これまでにあげた運輸サービス面での切磋琢磨とは別次元の展開も見られた。

粗品合戦もそのひとつ。阪神は、往年の関西鉄道よろしく、車内で乗客にもれなくハンカチを配ったことがあった。もちろん、速い阪急に乗客が流れるのを防ぐためである。けれども、そのことを耳にした阪急は、急遽、車内でタオルを配り出す。阪神間の運賃は、たかだか40銭。これは、もう、採算度外視の意地の張り合いとしかいいようがない。

実際、戦前の阪神・阪急両社の対抗意識には、敗戦後の妙におとなしくなった我々日本人など理解の域を超えるがごとき、おどろおどろしい怨念めいた何かがあった。それを伝える有名な話として、次のようなものがある。

阪神本線の西宮停留場にほど近い西宮神社の十日戎(1月10日)でのこと。阪急も西宮北口停留場と夙川停留場との間に西宮戎臨時停留場を設け、怒濤の如く押し寄せる何万人もの参拝客の一部を自社線で輸送しようと企てた。「戎さんは阪急で」と大宣伝したのである。

が、これは阪神にしてみれば、乗客の一部を奪われることではないか。けしからぬ話となろう。そこで阪神は、当時、この地域で電力供給事業を手掛けていたのをいいことに(戦前の私鉄は沿線地域への電力供給を事業の一つとしていた会社が多かった)、1月9日の宵戎、西宮戎臨時停留場から西宮神社への参道の街路灯を、すべて消してしまったのである。なんたる大胆不敵な営業妨害であろうか。

「戎さんは阪急で」の宣伝に誘われて、やって来た参拝客もいい迷惑だが、阪急もまさか、そこまでやられるとは思ってもみなかったに違いない。小林一三の怒り狂った顔が眼に浮かぶ。(本書pp.127-128より)

これは阪急VS阪神のほんの一部に過ぎません。そして本書には、阪急、阪神にかぎらず、競合・対立・協定・破談・合併・買収の歴史がふんだんに盛り込まれています。ぜひ手にとってお確かめ願います。
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