9月20日発売!『鉄道快適化物語』
ご無沙汰しております。鉄道手帳編集部です。
毎度のことで恐縮ですが、当ブログは波動輸送よろしく、季節ごとに臨時列車を運行する感覚で記事をアップしているため、僭越ながら「不定期連載」を堂々と謳っております。
が、いわゆる繁忙期に入りましたので、相変わらずの不定期ではありますが、しばらくはこまめに更新しようと思います。お時間のある方(加えて少しくらいの誤字脱字、勘違いはまあまあ許せるという方)は、しばし毒にも薬にもならない話にお付き合いくだされば幸いです。
さて、今月は鉄道本が3点出ます。ひと月に3点も出すのは初めてのことで、おかげでこの8月は盆休みどころか、土日祝日もほぼ返上する羽目になりましたが、いずれも情熱を傾けた甲斐のある一冊です。
1冊目は『鉄道快適化物語――苦痛から快楽へ』という本。今日、印刷会社から刷り出しが届きました。

小島英俊著 四六判・272ページ 本体1,700円(税別)⇒画像クリックで書籍案内に飛びます
明治5(1872)年の鉄道開業からこのかた、日本の鉄道は飛躍的な進歩を遂げ、その国民性も相俟って独自の道を歩みつづけ、世界に誇るべき存在となりました。
その歩みのハイライトとして外国メディア等でよく取り上げられるのは、世界初の高速鉄道をはじめとする技術発展、緻密なダイヤとその正確な運行、他国には例を見ないほど多くの鉄道会社が共存することからくる多彩な車両群といったところでしょうか。
日本の鉄道の来し方や現在の立ち位置をみる場合、こうした技術や運行システムの発展と多様性はたしかに不可欠な要素ですが、本書はここに「快適性の向上」という視点を加えることを提案します。
ふだんから鉄道を利用しているとあまり意識しないものですが、日本の鉄道はけっこう快適にできていると思うのです。もちろん、大幅な列車遅延や通勤ラッシュなど、もう少しどうにかならないかと思うこともありますが、見方を変えればそのほかのことが気にならないほどに整っているとも言えます。
ところが、今から130年ほど前、東海道線が全通したばかりの頃の列車旅行はまったく様相が異なっていました。本書の「はしがき」から引用してみます。
今の普通車に該当する三等車の座席は板張りで固くて狭いし、ランプ照明は暗くて頼りない。冷暖房などという文明の利器はなく、夏は蒸し暑く、冬は薄ら寒い。トイレは少なくて、しかも垂れ流し式で御世辞にもきれいとは言えず、当然臭う。車外への「黄害」も問題であった。さらには汽車であるから、煤煙にも悩まされる。まさに苦痛の長旅であった。
大変な時代ですよね。著者の小島さんによれば、「旅行を意味する英語のtravelは、フランス語のtravailに語源があるといわれ、travailには「苦痛」という意味もある」そうですが、当時の列車旅行はそれを体現するものであったのです。
明治時代の3等車
山陽鉄道の1等寝台車
オリエント急行の個室
ふたたび「はしがき」からの引用。
こうした時代を経て、列車の快適性は徐々に向上していった。座席のサイズや材質は少しずつ改善されて、少々の長旅にも耐えうるものとなったし、やがて夜行客のための寝台車も出現した。半日以上に及ぶ長時間の乗車ともなれば食事が欲しいところで、食堂車やビュッフェも登場した。これは単に空腹を満たすのみならず、新たな旅の楽しみを提供した。さらに、実際にその恩恵を蒙る人は多くないであろうが、展望車やラウンジカーも現れた。鉄道の快適化のシンボル的存在といえよう。
車内設備の変遷も目を見張るものがある。車内照明は、灯油ランプ、ガス灯を経て、蛍光灯、LED照明となった。暖房は比較的早くにスチーム暖房が導入されたし、それに比べると時間はかかったが、通勤冷房車も当たり前となった。トイレも清潔になり、今や世界の先端を行く。
世界に誇る新幹線は、海外では考えられないほど高頻度で運行し、旺盛な旅客需要に応えつつ、定時運行を実施している。あまりにも速いので、往時嫌われたSLの煤煙が今や懐かしいほどである。
というわけで、長くなってしまいましたが、本書ではこうした「快適性向上」の歩みを、テーマを立てて具体的に辿ります。安全性やスピードの向上はもとより、乗り心地の改善、車内設備の進化、果てはあこがれの豪華列車まで、さまざまな観点から日本の鉄道の進歩を考察しています。
本書発売は9月20日です。よろしくお願い申し上げます。
毎度のことで恐縮ですが、当ブログは波動輸送よろしく、季節ごとに臨時列車を運行する感覚で記事をアップしているため、僭越ながら「不定期連載」を堂々と謳っております。
が、いわゆる繁忙期に入りましたので、相変わらずの不定期ではありますが、しばらくはこまめに更新しようと思います。お時間のある方(加えて少しくらいの誤字脱字、勘違いはまあまあ許せるという方)は、しばし毒にも薬にもならない話にお付き合いくだされば幸いです。
さて、今月は鉄道本が3点出ます。ひと月に3点も出すのは初めてのことで、おかげでこの8月は盆休みどころか、土日祝日もほぼ返上する羽目になりましたが、いずれも情熱を傾けた甲斐のある一冊です。
1冊目は『鉄道快適化物語――苦痛から快楽へ』という本。今日、印刷会社から刷り出しが届きました。

小島英俊著 四六判・272ページ 本体1,700円(税別)⇒画像クリックで書籍案内に飛びます
明治5(1872)年の鉄道開業からこのかた、日本の鉄道は飛躍的な進歩を遂げ、その国民性も相俟って独自の道を歩みつづけ、世界に誇るべき存在となりました。
その歩みのハイライトとして外国メディア等でよく取り上げられるのは、世界初の高速鉄道をはじめとする技術発展、緻密なダイヤとその正確な運行、他国には例を見ないほど多くの鉄道会社が共存することからくる多彩な車両群といったところでしょうか。
日本の鉄道の来し方や現在の立ち位置をみる場合、こうした技術や運行システムの発展と多様性はたしかに不可欠な要素ですが、本書はここに「快適性の向上」という視点を加えることを提案します。
ふだんから鉄道を利用しているとあまり意識しないものですが、日本の鉄道はけっこう快適にできていると思うのです。もちろん、大幅な列車遅延や通勤ラッシュなど、もう少しどうにかならないかと思うこともありますが、見方を変えればそのほかのことが気にならないほどに整っているとも言えます。
ところが、今から130年ほど前、東海道線が全通したばかりの頃の列車旅行はまったく様相が異なっていました。本書の「はしがき」から引用してみます。
今の普通車に該当する三等車の座席は板張りで固くて狭いし、ランプ照明は暗くて頼りない。冷暖房などという文明の利器はなく、夏は蒸し暑く、冬は薄ら寒い。トイレは少なくて、しかも垂れ流し式で御世辞にもきれいとは言えず、当然臭う。車外への「黄害」も問題であった。さらには汽車であるから、煤煙にも悩まされる。まさに苦痛の長旅であった。
大変な時代ですよね。著者の小島さんによれば、「旅行を意味する英語のtravelは、フランス語のtravailに語源があるといわれ、travailには「苦痛」という意味もある」そうですが、当時の列車旅行はそれを体現するものであったのです。

明治時代の3等車

山陽鉄道の1等寝台車

オリエント急行の個室
ふたたび「はしがき」からの引用。
こうした時代を経て、列車の快適性は徐々に向上していった。座席のサイズや材質は少しずつ改善されて、少々の長旅にも耐えうるものとなったし、やがて夜行客のための寝台車も出現した。半日以上に及ぶ長時間の乗車ともなれば食事が欲しいところで、食堂車やビュッフェも登場した。これは単に空腹を満たすのみならず、新たな旅の楽しみを提供した。さらに、実際にその恩恵を蒙る人は多くないであろうが、展望車やラウンジカーも現れた。鉄道の快適化のシンボル的存在といえよう。
車内設備の変遷も目を見張るものがある。車内照明は、灯油ランプ、ガス灯を経て、蛍光灯、LED照明となった。暖房は比較的早くにスチーム暖房が導入されたし、それに比べると時間はかかったが、通勤冷房車も当たり前となった。トイレも清潔になり、今や世界の先端を行く。
世界に誇る新幹線は、海外では考えられないほど高頻度で運行し、旺盛な旅客需要に応えつつ、定時運行を実施している。あまりにも速いので、往時嫌われたSLの煤煙が今や懐かしいほどである。
というわけで、長くなってしまいましたが、本書ではこうした「快適性向上」の歩みを、テーマを立てて具体的に辿ります。安全性やスピードの向上はもとより、乗り心地の改善、車内設備の進化、果てはあこがれの豪華列車まで、さまざまな観点から日本の鉄道の進歩を考察しています。
本書発売は9月20日です。よろしくお願い申し上げます。
スポンサーサイト