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『鉄道の基礎知識』の話(2)

前回、所澤氏と顔合わせをし、意気投合したところまで書きました。改札で所澤氏を見つけた時は、事前に読んでいた氏の著作から受ける印象とはだいぶ違ったので戸惑いましたが、基本的には明るく気遣いのある人[注1]なので私の緊張も徐々に解けていき、帰る頃には雑談を楽しむまでになり、充実した気持ちで社に戻ったものです。

とはいえ、弊社ではじめての鉄道本ですから(企画書を出したのはこの本が先。実際にはじめて出した鉄道本は『鉄道手帳[2009年版]』)企画を提案する時はいろいろ悩みました。前にも書いたように、鉄道本を販売した経験がないわけですから、内容の良さとは別に説得材料が必要です。幸い、氏の著作には一定の販売実績がありましたので、この点は助かりました。ただ、それが弊社にそのまま当てはまるかというと、それは別の話です。過去の数字は、著書の良さもさることながら、ある程度の販売ノウハウもあったからこその数字です。新しいジャンルを切り拓こうとする時は、常にこうした壁が立ちはだかるものです。

こういう時は一席ぶつしかありません。むろん、それなりの施策は述べますが、なによりも担当者としての想いを語らねばなりません(と私は思います)。この本の良さ、この本を自社から出す意味、販売可能性、このジャンルの将来性、先々の計画といったことを(多少ハッタリをかましつつ)熱意をもって伝えるわけです。

と書くと若干カッコイイ気がしますが、実際は冷や汗、脂汗たらたらで、会議が終わったときはどっと疲れました。これでもしコケたら、所澤氏に合わす顔がありませんから、内心は「必死のパッチ[注2]というやつです。

幸い企画は可決され、『鉄道の基礎知識』を世に出すことができましたが、もしこのとき企画が通っていなかったら、『鉄道手帳』も作れなかったかもしれません。

企画を通した後、ふたたび所澤氏と打ち合わせをしました。本の内容は、山海堂から出ていた『鉄道雑学のススメ』をベースに、入門書としてより内容を充実させること、目次はこんな感じ、頁数はB6判で288頁、価格はこれくらい……というような話を詰めて、一杯飲み。二人とも良い気分でした。

ただ、このあとがよろしくありません。当初予定では『鉄道雑学のススメ』に大幅な加筆修正を加えるという話でしたので、数ヵ月後には脱稿のはずでしたが、なかなか捗りませんでした。手を加えだすとアレもコレもと気になるらしく、筆は進むにつれて書くことが増え、ゴールがだんだん遠くなるのです。

さらに、とある書店で聞いた所澤氏への印象――「ああ、雑学の人」というようなコメントがありました――が気に入らなかったらしく、「たしかに雑学の本だけれど、これですべてと思ってもらっては困る。よし、それなら徹底的に書くよ」と宣言。

個人的には内容が深まること自体は嬉しいのですが、これは少々困りました。当然スケジュールどおりには進まなくなりますし、頁数や価格設定なども変更する必要がでてくるかもしれません。内容のクオリティ自体は心配していませんでしたが、いつ原稿が出来上がるのかも心配です。

心配は現実になり、以降、氏から連絡があるたびに「この章はボリュームが大幅に増えそう」「ここは構成も含めて全面的に書き換える」「写真はどんどん入れる」などと言われ、前進しているのか後退しているのかよくわからない有り様でした。そのうち、四六判で出すには難しいボリュームになったので判型をA5判に変更、それでも十分ではないので2段組みにして1頁あたりの字数を増やすことにしました。20万字程度の原稿になるはずが、最終的には50万字以上になってしまいました。当初企画とはまったく別ものになってしまうので大変困るのですが、所澤氏の決意は固いものでしたし、私もどうせならば単なる焼き直しではなく、より中身のある本にしたいと思いましたし、またその予感もありましたので、覚悟を決めて最後までつきあうことにしました。



[注1]明るく気遣いのある人……怒ると迫力のある顔になるのですが、機嫌がよい時、「ちょっと無理言ってもいい?……」という時には人なつっこい笑顔になります。いろいろな職業を経ているだけあって、いかにも人生経験豊富という感じの人ですが、意外に人見知りでもあります。この頃は金髪に口ひげをたくわえていて、「やんちゃな徳大寺有恒氏」という感じでした。基本的には顔をさらさない人なので写真は少ないのですが、『時刻表タイムトラベル』(ちくま新書)には所澤氏近影があります。この写真には面白い話があるのですが、諸般の事情によりここに書くのは自粛します。

[注2]必死のパッチ……関西で、必死であること、一生懸命であることを強調するために、あるいは茶化して言う時に使う言葉(たぶんほかでは言わないと思いますが、どうですかね)。私の父もよく使っていました。パッチは股引(ももひき)のことですが、なぜパッチなのか。じつは単なる語呂合わせではなく、ちゃんとした由来があるそうで、「必死」は将棋の「必至」から来ているとのこと。詳しくは、すみませんがネットで調べてください(説明がややこしいので)。


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