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ダイアリー欄の編集――補足

昨日、ダイアリー欄を毎年ひそかに改訂していることをお伝えしましたが、具体例がないとわかりづらいかもしれません。というわけで、今日10月23日の欄を例に見てみましょう。2009年版と2013年版の新京成電鉄設立に関する欄外記述を読み比べてみてください。


【2009年版】
営業開始は翌年12月27日(新津田沼~薬園台前間)。


なんともあっさりした記述です。2009年版は1週間1ページ仕様でしたので、欄外スペースがほとんどなかったせいもありますが、これだけだと「ふーん、それで」で終わってしまいますね。それでは、2013年版では同じ項目に関する記述がどうなっているのか。ご確認ください。


【2013年版】
営業開始は翌年12月27日(新津田沼~薬園台前間)。新京成線は曲がりくねった線形で知られるが、これは同線がもともと旧日本陸軍鉄道連隊の演習用線路であったことによる。演習ではあらゆる条件での鉄道敷設能力が求められたからで、結果として変化に富んだ線形となった。なお、新京成線開業にあたっては改軌が行われ、軌間は演習用の600㎜から1067㎜に変更された(その後、1953年に全線を1372㎜に、1959年に全線を1435㎜に改軌している)。


スペースやスケジュールの都合があるので毎回このように改訂できるわけではありませんが、可能なかぎり情報量を増やす方向で改訂しています。

以上、ダイアリー欄の編集についての補足でした。

ダイアリー欄の編集――ひそかに毎年改訂しています

企画が可決されると、さっそく所澤氏と企画詳細を詰める作業に入りました。数回にわたる打ち合わせを経て構成要素が出揃い、仕事の分担も決まりました。巻頭路線図と高度な知識を要する資料は所澤氏が担当し、ダイアリー部分と「JR車両の形式記号・番号の読み方」のような基本的な資料は編集部で作成することになりました[注1]

ダイアリー欄についていうと、鉄道関係の年表・事典や社史などをもとに原稿を書きためていくのですが、これが考えていた以上に難しい作業でした。まず無数にある鉄道史上の出来事のなかから項目を選ぶのに困りました。なにしろ勘所がわからないものですから、自分でもじれったくなるほど時間がかかります。そのくせ、自分が知る懐かしい車両が出てきたり、出来事に関する詳しい記述があったりすると、ついつい前後を読み込んでしまいますから、時間はどんどん過ぎていきます。

日付を特定するのも難問で、この出来事を入れたいと思っても正確な年月日が不明だったり、資料によって日付が違っていたりするので、これまた困ります。逆に、特定の日に出来事が集中していて、項目を絞らなければならないケースもありました。せっかく調べ上げた項目を削るのは忍びないことですが、やむを得ません。

所澤氏による容赦のない「赤入れ」も頭痛の種でした。氏の指摘はいずれも的確で、精度が高まっていくのはありがたいのですが、固有名詞や年月日は言うに及ばず、表現のしかたも厳密にチェックされたので原稿は朱筆だらけとなり、神経はズタズタです。再調査が必要な項目もかなり出てきて、何度も心が折れそうになりました。ただ、この時の「指導」のおかげで、鉄道本を編集するコツや心得を学ぶことができたように思います[注2]

2009年版をお持ちの方はご存じでしょうが、この時のダイアリー欄には何の出来事も記されていない箇所が多数あります(下掲写真)。締切まで項目収集にあたるとともに、【豆知識】を入れてなるべく空欄ができないように努めましたが、当時はこれが限界でした。また、この時は1週間1ページ仕様だったので、メモスペースが小さくなってしまい、ダイアリーとしての使い勝手が悪くなってしまったのも反省すべき点でした。

2009年版のダイアリー欄


これらの問題点は2010年版以降で解決していくことになります。まずダイアリーを見開き1週間仕様にし、メモスペースを確保しました。また、空欄を減らすべく資料を読み込み、すでに何らかの記述のある項目についても情報量を増やすことに努め、さらに欄外スペース(右ページの下部)の補足解説の充実を心がけました。この作業は毎年続き、2012年版でようやく空欄をなくすことができました(1週間見開きのページについてのみ)。今後も少しずつ整備していきたいと思います[注3]


[注1]所澤氏との打ち合わせ……打ち合わせはたいてい「一杯つき」で、2人で5~6時間飲むのはざら(最近は3~4時間)。最初は仕事の話をしているのですが、いつのまにか氏の大好きな「必殺」シリーズや特撮シリーズの話になってしまいます。この方面に関する氏の造詣は鉄道研究と同じくらい深く、その抜群の記憶力には毎度驚かされます。ちなみに特撮はウルトラセブンとマイティ・ジャックをこよなく愛し、カラオケは「太陽戦隊サンバルカン」(OP)が十八番です。

[注2]所澤氏の朱筆……「一般的にはこういう書き方でいいのだけど、厳密じゃない。誤解される可能性もあるから、こう書くべし」という具合によく喝を入れられました。こちらは資料をもとにそう書いているのですが、知識と経験に裏打ちされた所澤氏の指摘は説得力があり、とても勉強になりました。とはいえ、2009年版の編集を終えた際、「初めて鉄道本を編集したわりには良かったよ。まだ赤が少ないほうだよ」と慰めの言葉をいただくほど凹みましたね。

[注3]ダイアリー欄の改訂……当初は「毎年少しずつ記述を増やしていけばいい」とやや楽観的に考えていましたが、年が明けるごとに曜日がずれることを忘れていました。1年に1日ずつずれていくので(日曜日が月曜日になる。閏年はさらにずれる)、当然ダイアリーページのレイアウトも1日ずつずらさなければなりません。当たり前だし、簡単なことじゃないかと思われるでしょうが、さにあらず。日付の移動に合わせて欄外の補足解説もずらし、さらに行数を調整する必要があるのです(欄外記述があふれ出したり、少なくなったりするため)。地味ですが、なかなかしんどい作業です。こんな仕組みにするんじゃなかったと毎年思いながらも、みなさまに「へぇー」と思っていただけるよう、記述の見直し・加筆に手間ひまかけております。

『鉄道手帳』をつくろう!

鉄道ファンのための手帳をつくれないか――こんな妄想を抱いたのは2007年の冬のこと。そろそろ来年の手帳を買おうと書店の手帳コーナーに行ってみると、『歴史手帳』『茶道手帳』『京都手帖』『天文手帳』といった趣味の手帳が並んでいました。ちょうどこの時、『鉄道の基礎知識』の企画を練っている最中でしたから[注1]、ピンと来ました。

「鉄道趣味に特化した手帳があったら面白いかも。鉄道関連の資料や蘊蓄が盛りだくさんで、毎日鉄道の世界に浸れるような手帳。まだどこからも出ていないはず」。じつに単純な発想でお恥ずかしいかぎりです。

正確にいうと、鉄道をテーマとした手帳は当時すでにありました。まったく同じ名前の『鉄道手帳』(オレンジページ発行)と『鉄道の旅手帖』(実業之日本社発行)の2冊です。ただし前者は乗車記録帳、後者は乗りつぶし手帳(画期的な手帳!)であり、スケジュールないしダイアリー機能をもった手帳ではありませんでした。やるなら今です。

結果からみて、これは悪くない思いつきだったと思います。ただし、こういう企画は思いついた時は楽しいのですが、実現まで漕ぎ着けるのが難しいものです。

日本の鉄道ファンは目が肥えていますから、中途半端なものはつくれません。かといって作り込みすぎると、一部の人にしか受け入れられなくなってしまいます。編集部単独で作れるようなものではありませんから、専門家の協力も必要です。

また各年版でつくる場合、おのずと販売期間が限られますし、資料を改訂するなどして新味を出し続けないとすぐに飽きられてしまうかもしれません。加えて弊社ではそれまで「鉄道本」を扱ったことがなく、私自身「手帳」を製作したこともありませんでしたから、経験もノウハウもまったくなく、企画立案の段階からかなりの時間を要しました。

幸いにして所澤秀樹氏が責任編集を引き受けてくださることになり、コンテンツのほうは何とか目処が立ちました。イメージづくりのための組見本も見よう見まねで何とかつくることができ(エクセルで作成)、参考資料もそろいました。

次のステップは企画会議ですが、その前に社内の根回し、もとい啓蒙も必要です。何しろ社内には鉄道ファンがまったくおらず(あとで1人いたことがわかりましたが)、鉄道本をつくりますと宣言しても反応はいまひとつ。

そこで、とりあえず鉄道趣味の面白さと可能性を知ってもらおうということで、「淡路町小鉄会」[注2]なるグループをひそかにつくり、コミック『鉄子の旅』を回覧したり、鉄道バーに誘ってみたりして、鉄道の認知度を高めることにしました。

やってみると意外に反応があり、「模型イベントがあるらしい」「こんな鉄道グッズがあったよ」という情報提供が続々。さらに「じつはムーンライト九州を乗り継いで鹿児島まで行ったことがある」「岩手まで各停で行った」という強者もいて、なかなか心強い。

これが功を奏したのかはわかりませんが、企画会議ではいろいろ質問が出ました。全然見込みがなければ、一蹴されるか沈黙の時間が長くなるかですから、悪くない兆候です。けれども手放しで絶賛というわけでもなく(そりゃそうです)、会議が終わった時はやや不安でした。

紆余曲折はありましたが、結局、社長が最も理解を示してくれ、「面白いやん。やってみたらええやん。ただし、3年は続けるように」と鳥井信治郎氏ばりの檄[注3]。ありがたいことです。この時の言葉は、その後の苦しい編集作業の支えになりました。



[注1]『鉄道の基礎知識』……最初はB6判300頁弱の本になるはずでしたが、ある事件をきっかけに著者・所澤氏が発奮したため、結局、A5判424頁(しかも2段組)という大著になってしまいました。2010年2月発行、本体価格2300円+税。

[注2]淡路町小鉄会……読み方は「あわじまちこてつかい」。「淡路町」は弊社本社ビル住所にちなんで、「小鉄会」は鉄道クラブを名乗るほど鉄道に詳しくないため、上方の落語家が師匠の名に「小」を付けるのにならいました。近年は休会中。

[注3]鳥井信治郎氏……サントリー創業者。2代目社長・佐治敬三氏がビール製造事業の開始を相談した時に答えた「やってみなはれ」の一言は、サントリーのチャレンジング・スピリットを象徴する言葉として有名。かつてビール大手3社に大きく後れをとっていた時代を知る者としては、近年のプレミアムモルツの好調ぶりをみると、胸が熱くなります。

★所澤秀樹著『鉄道の基礎知識』(創元社刊)

★「やってみなはれ」についてはコチラを参照(サントリーホールディングス株式会社HP)